第11章 それぞれの役割
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ナマエは時折、ふとした瞬間に目の光を消して、酷く暗い表情をする。
それはいつだって、幸福な笑顔が生まれるはずの穏やかな場所で。
(今度は何考えてんだか)
人が好きで、誰かに必要とされるためなら命すら懸けられるナマエ。
そこに恵という"個"への執着が割り込んで、ようやく献身の対象が一つに絞られると思ったのに。
その魂にまで染み付いた悪癖は、そう簡単には拭えないらしい。
「ナマエ、何食べたい?」
「私……?ん〜…虎杖くんと釘崎さんが食べたいものかな」
お腹が空いた、とわざとらしく笑って先を歩くその背中に、僕はあえて軽く問いかけた。
けれど返ってきたのは、新しく増えた仲間がどうすれば喜ぶか、それだけを演算しているような答え。
耳障りのいいそれは、蓋を開けば空っぽで、それでいて純粋すぎる献身そのもの。
「二人の歓迎会でしょ?私は、二人が食べたいものがいいな」
そう言って振り返るナマエの笑顔は、直視するのが痛々しいほどに愛らしい。
「……恵は?」
「五条先生の奢りなら何でもいいです」
「お前はホンッッットに可愛くないね」
いい加減、ナマエの愛嬌を見習ってくれ。
そう軽口を叩こうとしたけれど、
坂の上から夕日を背負い、僕と恵を見下ろすように佇むナマエの笑みに、ふと言葉を奪われた。
────ダメだ。
このままだと、何かの拍子にナマエが壊れる。
そう危機感を抱いたのは、僕だけじゃなかったらしい。
「………」
隣に並んでいた恵が弾かれたように坂を駆け上がり、僕より先に、ナマエの傍に落ち着いた。