第11章 それぞれの役割
「あのっ、僕の家、もうすぐそこなので……っありがとうございました!!」
幾度か角を曲がった先。
三角屋根の一軒家を指さした男の子は、私と恵くんに丁寧にお辞儀をしてそう言った。
「どういたしまして。……ああいう所は危ないから、今度から近づいちゃダメだよ?」
「はっ、はい……!」
目線を合わせるように腰を折り、諭すように笑みを浮かべると、彼は必死に首を縦に振る。
「もう危ないところには、行きません!」
「ふふ、いい子」
元気よく返事をする男の子の頭をぽんぽんと撫でると、彼は何度も瞬きを繰り返し、私の目をじっと見つめた。
「お姉さんの目、綺麗」
「えっ……ほ、ほんと?」
「うん!僕の大好きな、りんご飴みたい!」
「りんごあめ………?」
初めて聞くその単語に、思わず首を傾げる。
そして何をするつもりか、男の子の小さな手が私の頬に近づいてくるのをじっと見つめていた、その時。
「親が心配すんぞ、早く帰れ」
安心する低い声と共に恵くんが男の子の手をひょいと遮り、有無を言わせぬ圧を纏って帰宅を促した。
「……お兄さんは、お姉さんの何なんですか?」
「はあ?」
そう言った男の子は、まだ研がれ切っていない冷たい視線で私から視線を逸らし、恵くんを見上げる。
その問いかけに恵くんは一瞬だけ言葉を詰まらせたけれど、男の子の何倍も鋭い視線で見つめ返し、眉間に深い皺を寄せた。
「ひっ……!す、すみませんでした…!!ありがとうございました……!!」
あまりの気迫に、男の子は短い悲鳴をあげて家へと駆け込んでいく。
バタン、と勢いよく扉が閉まる音を聞きながら、私は呆気にとられて隣の恵くんを見上げた。