第11章 それぞれの役割
「お前ねぇ、いい加減タラレバで自分を追い込む癖やめなさいよ」
「……」
あえて突き放すような言葉の後、五条さんは一歩、私との距離を詰めた。
目隠し越しのはずなのに、その鋭い視線のせいで心臓に刃物を添えられているような錯覚に陥ってしまう。
「七海に話は聞いたけど、お前が居て助かった、って言ってたよ。 アイツが態々そんなこと言うの、珍しいんだから」
そう言って、五条さんの大きな手に肩を掴まれる。
そこには励ましのような温かさはなくて、ただ事実を認めろと迫るような重圧だけがある。
「それは、七海さんが優しいからで……っ」
「じゃあお前は、一昨日の夜、自分は仙台で二人を助けて、七海は死んでも良かったと思ってんだ?」
「え……?」
被せるように告げられた言葉に、頭の中が真っ白になった。
五条さんが何を言っているのか、全く理解できない。
だって私は、……私が、誰かが死んでもいいなんて、思うわけないのに。
「わ、私……そんなこと、一言も言ってない……!」
慌てて声を震わせて否定しても、五条さんは清々しいほどに冷静な顔で私を見下ろしている。
初めて見るその表情に、喉の奥が引き攣り、呼吸の仕方を忘れてしまいそうだった。
「言ってなくてもそういうことでしょ。
お前が救える命は、自分で思ってるよりずっと多い。それなのに過去を呪うってことは、今存在してる"救った命"を後悔してる証拠」
「っ……」
五条さんの言うことは、いつだって正しい。
私の抱いていた無力感は、五条さんにとってただの"我が儘"でしかなかったのだ。
真っ向から突きつけられた逃げ場のない正論に、私はただ唇を強く噛み締め、押し黙ることしかできなかった。