第11章 それぞれの役割
「んじゃ、二人とも行ってらっしゃ〜い!」
虎杖くんに呪具を与えたあと、五条さんは虎杖くんと釘崎さんを廃ビルの中へと送り出した。
「で、ナマエはさっきから何落ち込んでんの?」
「え……あ、えっと……っ」
ふいに声を掛けられ顔を上げると、目隠しの奥から全てを見透かすような視線に囚われた。
取り繕うような笑みを浮かべて誤魔化そうとしたけれど、「嘘をつくな」と言わんばかりのデコピンをお見舞いされ、言葉が喉の奥でつかえる。
「野薔薇に言われたこと、気にしてんの?」
「え……?あ…はい、そうかも」
「そうかもって何?………ああ、あっちの方か」
「っ…、」
しまった、勘づかれてしまった。
適当な理由を見つけてくれていたからそれに乗っかってみたけれど、言葉選びを間違えてしまったらしい。
そもそも、さっきの虎杖くんの話を聞いて以降、
私の頭の中は「あの日、仙台にいなかった自分」への嫌悪感でいっぱいで、釘崎さんに何を言われたかすら霞んでしまっていた。
そんな状態で嘘を突き通すことなんて、最初から出来るはずもなかった。
「お前があの場に居なかったのは、僕にとっても想定外だったよ。 まさか上の連中が、オマエを一級に推薦するとはね」
「……っ」
ほんの一瞬、五条さんの体からどす黒い呪力が溢れた気がしたけれど、次の瞬間にはいつもの凪いだものへと戻っていた。
緊張から息を呑んだ私を静かに見下ろして、五条さんは言葉を続けた。
「それでも、あの日のことにお前が責任を感じる必要は全くない。
逆にお前が京都に居なかったら、救えなかった命もあるでしょ」
報告書を読まれているのなら、五条さんは既に全てを知っている。
私の目の前で人が死んだことも、その後に七海さんと協力して三つの命を救い上げたことも。
それでも───
「………七海さんは私がいなくても、何とか出来ていたと思います」
喉を締め付けられるような息苦しさの中。
無理やり吐き出した反論に、五条さんは「はぁ〜……」と、天を仰いで大きな溜息を吐き出した。