第11章 それぞれの役割
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電車に乗り、改札を抜け、駅から歩くこと約15分。
入り組んだ細道を何度も曲がり、民家や小さな個人店がまばらに見え始めた辺りから、虎杖くんと釘崎さんのテンションは目に見えて急降下していた。
そして。
「いますね、呪い」
「「嘘つきーーー!!!!」」
五条さんが「トウチャーク!」と声を張り上げたのは、六本木の華やかさとは無縁の、薄暗い廃ビルの前だった。
「六本木ですらねえ!!!」
「地方民を弄びやがって!!」
二人の罵声を右から左へ受け流し、釘崎さんの蹴りを無下限で軽々と遮断しながら。
五条さんはケラケラと笑って「近くにデッカイ霊園があってさ」と事の詳細を話した。
「やっぱ墓とかって出やすいの?」
「墓地そのものじゃなくて、墓地=怖いって人間の心の問題なんだよ」
「あー、学校とかも似た理由だったな」
虎杖くんの素朴な疑問に恵くんが淡々と、丁寧にフォローを入れる。
私はその言葉を裏付けるように、隣で小さくコクコクと頷いた。
「ちょっと待って、コイツそんなことも知らないの?」
「……いや、実は」
事情を知らなかったらしい釘崎さんが怪訝そうに眉を寄せると、恵くんと虎杖くんは、一昨日仙台で起きた一件を語り始めた。
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「……で、俺が宿儺を飲み込んで、五条先生に保護された…らしい!」
「飲み込んだぁ!?特級呪物をぉ!?」
一通りの経緯を聞き終え、最後に投下された特大の爆弾に、釘崎さんは露骨に顔を歪めた。
そして、虎杖くんの衛生観念があり得ないと叫びながら、彼から数歩距離を取る。
けれど、今の私にはそんなやり取りに笑う余裕なんて微塵もなかった。
虎杖くんの衛生観念よりも、彼が宿儺を取り込むに至った"理由"に、耐え難いほどの後悔を感じていたから。
(………恵くんを、助けるために…)
本来ならば、私がそこに居るはずだった。
私がその場にいれば、そんな凄惨な状況になんてさせなかった。
恵くんがボロボロになる必要も、虎杖くんが受肉する必要もなかったのに。
「っ……」
あまりの無力感に、唇を噛み締めることしか出来ない。
和気あいあいを仲を深める三人の輪から離れた場所で、私だけが暗い感情に支配されていた。