第10章 生きている証※
「あ〜…えっと、ミョウジは伏黒の彼女、ってコトでいい?」
「……まあ、」
ナマエの警戒心に満ちた視線から気まずそうに目を逸らしながら、虎杖がおずおずと尋ねる。
「彼女っていうかさぁ、婚約者でしょ?僕はまだ認めてないけど」
「こっ、婚約者ぁ!?マジか伏黒!!」
「…………」
驚愕する虎杖を余所に、俺は眠たげに擦り寄ってくるナマエに視線を落とし、その柔らかな髪を指先で梳いた。
「……さすが、ちゃんとしてんなあ」
「余計なこと言わないでくださいよ、五条先生」
「え~?無駄な牽制するくらいなら、今のうちに外堀埋めといた方がいいっしょ」
珍しく芯を食ったことを言われて押し黙ると、俺の腰に回されていた腕がふっと解かれた。
同時にナマエが背後から姿を現し、俺の服をつかんだまま隣に並び立つ。
「……虎杖くんの髪の色は、元から?」
「え!?あ、うん、そうだけど」
「そっか。じゃあ───お揃いだ」
さっきの警戒心はどこへやら。
花が綻ぶような、あまりに無防備で柔らかな微笑みに、それを向けられていない俺の心臓までグッと握られたような気がした。
事後の、熱を帯びたままの瞳で虎杖を見つめ、ナマエが虎杖の髪へと細い指を伸ばす。
…その指先が虎杖に触れる直前。
俺は反射的にナマエの手首を強く掴み上げ、その動きを無理やり止めた。
「……?」
「…そういうのやめろ」
「あ……ごめんなさい」
驚いて丸くなったナマエの瞳と、気まずさに固まる虎杖。
掴んだ手首から伝わる体温が、俺の独占欲で冷えていった。