第10章 生きている証※
「いや〜……男の嫉妬ほど惨めなもんはないよね」
意味深に何度も深く頷きながらそう宣った五条さんは、ナマエの顔がよく見える位置へと移動し、おもむろに両手を大きく広げてみせた。
「ナマエ、だ〜いすきな五条さんだよ〜。ほら、こっちおいで」
「………」
目の前で大きく広げられた腕を、ナマエは無言で凝視し、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
その数秒の沈黙に、五条さんの期待に満ちた笑みが引き攣っていった。
「……今は、ここがいい、」
そう言ってナマエは緩く首を横に振ると、俺の腕にしがみつくように服をぎゅっと握りしめる。
それを見た五条さんは数秒黙りこくった後、大声で駄々をこね始めた。
「なんっってこと!!!恵!!!僕のナマエを返してよ!!!」
「惨めですね」
「はあ?!?!」
さっき自分が吐いた言葉を綺麗に棚に上げているから、すかさずそのまま突き返してやった。
去年までのナマエなら、迷うことなく五条さんの胸に飛び込んでいただろうに。
今この瞬間に、他の誰でもなく俺が選ばれたという事実。その猛烈な優越感が、俺の独占欲をひしひしと満たしていく。
「はあ〜……あッ!!」
「……今度はなんですか」
芝居がかった重い溜息を吐き出した直後、五条さんは何かを思い出したようにパンッ、と景気よく手を叩いた。
その響きに、驚いたナマエが肩を揺らして俺の影に隠れる。
「ナマエ、悠仁、恵!!明日はお出かけだよ!」
五条さんの唐突すぎる宣言に、その場の全員の頭上に疑問符が浮かぶ。
戸惑う俺たちの反応を心底楽しむように、五条さんはニッと口角を上げて言った。
「四人目の一年生を迎えに行きます」