第10章 生きている証※
「ごめんて…!まさか、伏黒が部屋に女子連れ込んでるとは……」
気まずそうに頬を掻いて笑う虎杖に、ほんの少しの罪悪感が湧く。
いや、違う。どれもこれも、そこでニヤニヤと薄笑いを浮かべて立っている白髪の男が全て悪い。
「……いつもじゃねえから安心しろ」
「え〜!?安心って何が〜〜!?」
不意に背後から割り込んできた粘つく声に触れられたくない部分を突かれ、俺はもう一度殺意を込めて睨みあげる。
「もしかしてエッチなことしてたんじゃ……」
「いい加減殴りますよ」
わざとらしく、心底驚いたと言いたげな顔を作った五条さんは、「昼間からお盛んねぇ〜?」と虎杖へ同調を求める。
「あの〜……俺、同級生のそういうの、あんま知りたくねーんだけど…」
同情の籠った虎杖の視線と、全てを察して楽しんでいる五条先生の視線。
その板挟みの中で、俺はただ、部屋の中で安らかに眠っているナマエが目を覚まさないことを祈っていた。
────キィ
だが、そんな祈りも虚しく、固く閉じたはずの扉が開く音が廊下に冷たく響き、全員の動きが止まる。
「んん……」
覚めきっていない眼を擦りながら、ゆらゆらとした足取りでナマエが廊下に出てくる。
「どこも、行かないで……」
「っ、へ!?はい!?」
そして、あろうことか俺を通り越し、呆然と立ち尽くしていた虎杖の身体に強くしがみついた。
「……虎杖、」
「いやっ、いや待って!!俺じゃねえって!」
そんなもん、見ればわかる。
ナマエが寝ぼけて、隣にいた俺だと思い込んで抱きついたことくらい。
ただ、反射的に受け入れる体勢を取った虎杖の腕も、そこに収まっているナマエの身体も──その光景の全てが、猛烈に気に食わなかった。