第10章 生きている証※
寮の入口を抜け、談話室を通り、階段を上る。
そして自分の部屋へ続く角を曲がる瞬間、俺は思わず足を止め、呼吸を深めた。
「……っ、」
息を整えて角を曲がった瞬間。
部屋の扉の前で、小さく蹲るナマエの姿が目に飛び込んでくる。
半袖とショートパンツという薄着のまま、寒さに耐えるように膝を抱えるナマエの身体は、驚くほど小さく見えた。
「………ナマエ」
声をかけると、ナマエはゆっくりと顔を上げ、充血した瞳が俺を捉えた。
「…っ、ごめん、気づかなくて、」
そう言って無理やり口角を上げ、痛々しいほど弱々しく笑う。
その顔は安堵よりも先に、俺を怒らせていないかという心配が滲んで見えた。
「あの、…会いたくなって、待ってた」
そうやって嘘をつけばバレないと、ナマエは本気で信じているらしい。
もっとも、分かりやすいコイツの嘘に騙される人間は少ないだろうが……そんな呆れは、この健気すぎる姿を前にしては霧散してしまう。
「…部屋、入れよ」
「え……あ、うん」
俺は鍵を取り出し、ドアを開けた。
微かに震えるナマエの肩をそっと押して、冷え切った部屋の中へと押し込む。
背中越しに感じる体温は低く、俺は自分の不甲斐なさにまた奥歯を噛み締めた。