第10章 生きている証※
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空港を出てすぐ。
俺は待機していた補助監督の車に乗りこみ、高専へ向かった。
既に昼を過ぎているというのに、送った一言に対する返事はない。
「家入さんは医務室に待機してますので、そのまま向かってください」
「ありがとうございます」
補助監督に礼を告げ、後部座席の扉を閉める。
高専の長い石段を登り門を潜った瞬間、張り詰めていた糸がふっと緩んだ気がした。
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「大丈夫だと思うけど、何かあったらまた来な」
「……ありがとうございます」
家入さんは手早く俺の処置を済ませると、あくびを噛み殺しながら仮眠室へと姿を消した。
反転術式というのは便利だな、と改めて思うと同時に、それがどれだけ俺たちを支えているか痛感する。
(……行くか)
そう決意して医務室を出ようとした瞬間、仮眠室の奥から家入さんの声が響いた。
「ナマエを探すなら、一回部屋に戻るのをお勧めするよ」
「は……?え、何でですか」
俺が聞き返すと、家入さんは仮眠室でベッドを軋ませながら言った。
「今朝、早朝からアンタの部屋の前で座り込んでるって、噂になってたからね」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
早朝から……?
俺が飛行機に乗っている間、いや、恐らくもっと前から、アイツは俺の帰りを待っていたのか。
「…すみません、助かります」
「礼なら、あの馬鹿に酒でも持ってこさせてよ」
「………頼んでみます」
それだけ言い残し、俺は医務室を飛び出した。
相変わらずメッセージに返事はない。
携帯を持っていないのか、携帯の充電が切れていることにすら気づいていないのか。
どちらにせよ、アイツは今、ただ俺を待ち続けている。
そう思うと、自然と足がもつれるほど早足になった。