第10章 生きている証※
「……何アイツに送ってんですか」
俺の問いに、五条さんは口を尖らせ、不思議そうに首を傾げた。
「え、もしかして連絡来てないの?」
「来てませんよ」
「マジ?」
マジもなにも、アプリを開いた今だって、通知欄には一件の表示もない。
そういえば、俺がナマエを遠ざけたあの日から、アイツは俺の私的な任務に一切口出しをしなくなった。
それはナマエなりの気遣いだと分かっているし、俺もそれでいいと思っている。
ただ、裏で俺の事についてのやり取りをしているのを見せられると、我慢させているようで申し訳なさが込み上げた。
「………帰ります」
「ウンウン、そうしな〜!飛行機の手配はやっとくから」
五条さんの飄々とした声に背を向け、俺は逃げるようにその場を後にした。
(……一応、連絡入れとくか)
空港へ迎うタクシーの座席に深く沈み込み、俺は開いたままのメッセージアプリでナマエとの履歴を探した。
最後にやり取りしてから、もう何週間も経っている。
『今から帰る』
ただそれだけを簡潔に打って送った。
アイツがこの通知を見て、少しでも安心出来ればいいと思ったから。
送った直後の画面を暫く睨みつけながら、俺は自分の不甲斐なさに改めて奥歯を噛み締めた。