第10章 生きている証※
「あの……っ、せめて高専には戻りたいです! 何か、手はありませんか……!?」
私の問いに、七海さんは眉間に深く皺を寄せ、溜息をついて眼鏡の位置を直した。
「夜行バスの深夜便なら、まだ空席があるかもしれませんが……」
「それは、どうすれば乗れますか!?」
「………」
七海さんは助手席から私をじっと見つめた後、無言で自身の端末を操作し始める。
そして数秒の沈黙の後、彼は小さく、呆れを含んだ声で告げた。
「…私の方で手配しておきました。このままバスターミナルまで向かっていただけますか」
七海さんが運転席の補助監督さんに指示を出すと、車は慣れた様子で進路を変え、静かに減速して路肩に停車し、ナビを打ち始めた。
「あの……、本当に、すみません」
「この程度のことなら何でもありませんよ。任務も完遂していますし。……ただ、」
七海さんは、まるで私の内面を探るように真っ直ぐに私を見据えた。
「貴女を見ていると、どうにもあの白髪の人間が頭に浮かびます」
「はくはつ……?」
「五条悟、ご存知ですか?」
「…!!」
不意に口にされたその名前に、私は心臓が跳ね上がった。
「五条さんは、私の育てのお父さんです…!」
「ああ………どうりで、」
その短い一言に、これまでの私の言動のすべてに合点がいったという響きが混じっていた。
その後、夜行バスのターミナルまで、私と七海さんは五条さんのことについて二人で語り合った。