第10章 生きている証※
厳しいけれど、それは一級術師として何度も死線を越えてきた七海さんなりの忠告だ。
そう自分に言い聞かせ、溜息を飲み込もうとした、その瞬間。
─── ブブッ。
静かな車内に、通知音が響く。
重苦しい空気から逃げるように、私は慌ててポケットから端末を取り出した。
(あ……五条さんだ)
急ぎの用だろうか。
そう思ってメッセージアプリを開いた瞬間、私の思考は真っ白に塗りつぶされた。
「────ッ!!!」
狭い車内で勢いよく身体を起こした拍子に頭が天井に激しくぶつかり、鈍い音が響く。
「……何してるんですか」
「あ、いや、…ごめんなさい」
呆れたようにこちらを見る七海さんに、痛みで涙目になったままぎこちない笑みを返す。
私は震える手で、もう一度携帯の画面に視線を落とした。
(……恵くん、)
五条さんから送られてきたのはメッセージではなく、一枚の写真。
そこには、見覚えのある制服を纏い、血に塗れて座り込む恵くんの姿が映っていた。
(これだけ…?他になにか説明とか──っまさか)
五条さんですら対処しきれないほどの呪霊が現れて、それに手を焼いている?
だから、私に連絡ができない、とか?
「あっ、あの……!!今すぐ仙台に行きたいです!」
「は…??」
七海さんが軽蔑の眼差しで私を見ている。
でも、そんなことはどうでも良かった。
早く行かなければ、恵くんと五条さんが今、どんな状況に置かれているか分からない。
「もうこの時間です。新幹線も飛行機も、仙台へ向かう公共交通機関は全て終了しています。
どんなに急いでも、明日の朝でなければ不可能です」
「そんな…!!」
私はハンドルを握る補助監督さんの背中に向かって叫びそうになるのを必死に堪え、膝の上で握りしめた拳を震わせた。