第10章 生きている証※
「これを持って、近くの木陰に隠れていてください。……絶対に、山は降りないで」
私はそう言って、七海さんに渡したものと同じ赤い御守りを三人分、瞬時に編み上げてそれぞれに手渡した。
彼らは深く頷いた後、私の指示通り、近くの木陰へと這うようにして身を潜めた。
(……よし、次は七海さんを───!)
被呪者の安全を確認し、弾かれるように振り返った、その時。
月明かりの下、七海さんの振るう武器が、呪霊の肉を切り裂いていた。
その圧倒的な練度と技術の前に、一級相当のはずの呪霊が一撃ごとに巨躯を削られ、虫の息となって地に伏せている。
(すごい……。これが、一級術師)
思わず感嘆の息を吐き、足を進めた、その瞬間。
土煙に紛れ、七海さんの死角から最後の一撃を狙った呪霊の一部が伸びる。
……狙いは、七海さんの背後だ。
「───七海さん!!」
叫ぶより早く、私は腕の布を解き、繊維で寸断して呪霊の腕を霧散させる。
「拘束します…!!トドメは、お願いします!」
間髪入れず、繊維を再び強靭な布へと編み戻し、呪霊の四肢と胴体、そのすべてを絡め取る。
一切の身動きを封じて呪霊を固定した私に応えるように、七海さんは短く頷き、武器を振り上げた。
そのまま七海さんが呪霊の核を正確に断ち切ると、山に断末魔を響かせながら、呪霊は静かに塵へと変わった。