第10章 生きている証※
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山頂。
既に日は傾いていたものの、開けた視界のお陰で月明かりが私たちを照らしていた。
「………七海さん」
「はい」
目の前には、私たちの身体の何倍も大きい呪霊。
─── そして、怯えた瞳をこちらに向ける、三人の遭難者。
「………あなたたちも、身代わりにされたの?」
一人の震えた問いに、私は小さく首を振った。
身代わりにはなれなかった。だからあの人は呪われてしまったし、私はこうして生きている。
だけど、この人たちだけは。
「絶対、助けます」
私がそう告げると、夜風に髪を靡かせた女性は穏やかな表情を浮かべた。
その顔を見て、一刻も早くこの呪霊を祓わなければ、何かが手遅れになる──そんな確信に似た予感がした。
「私が前衛に立ちます。サポートを」
「任せてください」
目線を呪霊に据えたまま、短く頷き合う。
その後すぐ、七海さんは宣言通り呪霊に向かって走っていった。
今、私がすべきことは、七海さんが全力を出せる環境を整えること。
だから、まずは──── 被呪者の救出。
「きゃっ!!」
「うわあ!!」
腕に巻き付けていた布を伸ばし、三人まとめて引き寄せる。
七海さんはこちらを振り返ることもせず呪霊に向かっていったけど、その背中から微かな力みが抜けたのを感じた。
「あ、ああ……っ!助かりました……!」
「僕たち、ここに呼ばれて、騙されて…!!」
呪霊の足元から私の足元へ。
ゆっくりと布を解くと、腰を抜かした三人が縋るように私の足元へしがみついてきた。
「……貴女は僕らの神様だ、」
「…、」
一人が涙を流してそう呟けば、呼応するように他の二人も深く首を縦に振った。
───神様?
そんな大層な肩書き、私にはこれっぽっちも似合わない。
だってとうの昔に、そんなものは辞めたのだから。