第10章 生きている証※
「それでは、一度車へ戻りましょうか」
「はい、」
七海さんが体を反転させて山道を戻ろうとした、その時だった。
─── バチンッ!!
不吉な音を立てて、七海さんの手にあった御守りが内側から弾けるように真っ二つに裂け、地面へと落ちた。
「……これは」
七海さんの視線の先。御守りからは、黒ずんだ呪力が陽炎のように立ち上っている。
「私は既に、術式をかけられている……」
七海さんはそう呟くと、足元の御守りに落としていた視線を私へ向ける。
「何故、気づいたのですか」
「……気づいたというか、…ただの、勘です」
七海さんの無機質な瞳にじっと見つめられ、居心地の悪さに視線を彷徨わせながら、私は言葉を続けた。
「私は頭が良くないから、その可能性を説明することが出来なくて、」
「だからこれを?」
「はい」
七海さんは一度目を伏せ、真っ二つになった御守りを拾い上げると、それをポケットへ収めた。
「…育ての父にも、私は戦闘IQが赤ちゃんだってよく怒られるんです。
効率が悪いとか、もっと頭を使え、敵の裏をかけって」
「……」
「でもその分、────勘は当たる、らしいです」
「はあ……」
七海さんの呆れたような溜息に、ほんの少しだけ緊張が解ける。
「……何はともあれ、助かりました。貴女の勘がなければ、今の一撃で私は呪い殺されていた。
この状態では、山を降りることは不可能なようですね」
七海さんはネクタイを締め直し、手に持った武器を固く握り直した。
「恐らく、呪霊は山頂でしょう。気張って行きますよ」
「はい……!!」
固く頷いたあと、私は呪力を指先に集中させ、七海さんの隣で背筋を伸ばした。