第10章 生きている証※
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駅構内の雑踏に紛れながら、私は事前に伊地知さんから渡されたメモを取り出し、内容を頭の中で反芻する。
(………金髪で眼鏡をかけた、長身スーツの男性……どれだろ)
平日ということもあって、駅は歩くスーツ姿の男性で溢れかえっていた。
けれど、肝心の金髪に眼鏡という、一際目立つはずの姿は見当たらない。
しばらく待ってもそれらしき人物を見つけられず、伊地知さんに助けを求めるため携帯を取り出した、その時。
「貴女がミョウジさんですか」
「え……」
背後から落ちてきた、理知的で落ち着いた声に心臓が跳ねる。
声が聞こえた方向へゆっくり、ぎこちなく振り返ると、そこには清潔感のあるスーツに身を包んだ男性が立っていた。
「あっ、……あの、七海一級術師…ですか」
「はい、そうです」
「あ……っミョウジ ナマエです。今日は、よろしくお願いします」
七海さんの醸し出すあまりに大人な雰囲気に呑まれ、つい声を裏返しながら深く頭を下げる。
すると、七海さんもまた「よろしくお願いします」と、丁寧にお辞儀を返してくれた。
(………一年生の私にも、こんなに丁寧に接してくれるなんて)
呪術師というよりは、一流のビジネスマンみたいだと思った。
五条さんのような破天荒さはまるでなく、漠然とした信頼感が彼の背中から漂っている。
「それでは早速、現場へ向かいましょう。時間は有限ですので」
「はい…!」
無駄のない動きで歩き出す七海さんの後を、私は慌てて追いかけた。
五条さん以外の大人と組む、初めての共同任務。
緊張と、少しの好奇心────そして、まだ心のどこかに残っている仙台への未練を振り切るように、私は七海さんの背中について歩いた。