第10章 生きている証※
そんなやり取りがあったのが昨日の話。
早朝、私は手配された交通機関の座席に深く腰掛け、遠ざかる東京の景色を眺めながら京都へと向かっていた。
(………恵くん、大丈夫かな)
恵くんも二級術師だ。
心配なんて無用だと分かっている。
それでも、今回回収する呪物はこの世で一番危険なもの。
だからこそ、私が一番傍にいたかったのに。
(……ううん、大丈夫。玉犬たちがついてるんだもん)
芽生え始めた不吉な予感を根こそぎかき消すように、私は大きく左右に首を振った。
恵くんは私よりもずっと頭がいいし、それ故に術式の扱いも精緻だ。
呪力コントロールだって、幼い頃とは比べ物にならないほど上達しているのだから。
(心配なんて、しなくていい)
私は、私に与えられた目の前の任務に集中しなければならない。
そう自分に言い聞かせるように、事前に渡された資料に目を落とした。
─── 一級相当呪霊の討伐任務。
今回、私に割り振られた任務は、現在の自分の階級よりも格上の呪霊が相手だった。
今朝、見送りのために車を出してくれた伊地知さんにその理由を問いかけた時、伊地知さんはバックミラー越しに複雑な表情でこう言った。
「呪術連盟の総監部関係者数名により、ミョウジさんが一級術師に推薦されました。
そのため、ミョウジさんは本日から準一級術師となります。
一級術師との共同任務を数件こなした後、問題がなければ、正式に一級へと昇級です」
どうやら、私の知らないところで、私の戦いを見て、認めてくれた人たちがいたらしい。
それは呪術師としてこの上ない名誉なことだけれど、それさえなければ私は今頃、恵くんと同じ場所にいたのだろうか。
そう思うと、誇らしいはずの報告も今の私には少しだけ重く、不服に感じられた。