第30章 呆然と失墜
紅海の胸が少し痛む。
『だよね……悟の言い分聞かずに責めちゃった…
信用されてない気がして……』
硝子は少しだけ空を見上げた
「隠したのは、信用してないからじゃない…巻き込みたくない相手だから…だろうね」
紅海の呼吸が止まる
『…そうだよね…』
紅海の目から、また涙が落ちる…
でもさっきとは違った。
『私……同じ側に立ちたかっただけなのに』
「じゃ、それ本人に言いな」
「逃げたままで、お互い誤解したまじゃ気持ち悪いでしょ?」
「さ、仕事仕事~」少し離れて立ち上がり、ひらひら手を振って医療棟に戻っていく
医療棟の扉が閉まる音がした
静寂…
しばらくして、背後に、もう一つの気配が立った
医療棟裏…人の気配が抜け落ちたあと特有の静けさを持っている
壁に背を預け、紅海はしゃがみ込んでいた
呼吸が整わず、涙が落ち続ける
足音が近づき止まる
紅海の隣に五条は、何も言わずしゃがみ込んだ
沈黙…視線は紅海には向けず、うなだれている
暫くして…口を開く
「……何かさ~」
場違いなほど、いつもの調子
「海外出張って言いつつ、結構、楽しんじゃって、お土産も買ってきたんだよね~」
返事はない
紅海の肩が、涙を止めるために小さく揺れている
「でさ、乙骨憂太って2年がいるんだけどね? 僕、結構目ぇかけてるわけ
呪術の見識広げるために海外行っててさ、会いに行ったんだよ…
初めて会った時より逞しくなってんの…ちょっと感動した」
紅海の嗚咽が混ざる
でも五条は止まらない
「でさ、最近特級多いじゃん? だからまぁ、僕に何かあったらよろしく~って言ったわけ」
わざと軽く笑う
「そしたら何て言ったと思う?“五条先生に何かあるって、女絡みですか?”だってさ」
小さく肩を竦める
「僕そんなに背中刺されそう?」
押し殺していたものが、限界を越える
『……私……』
声が震えている
『ただ、悟と同じ場所に立っていたかったんだ……』
しゃっくり混じりの呼吸で、ゆっくりと話す
『でも、それは私のわがままだし……怒っちゃって……ごめん……』
指先が震える
『悟にとって隠し事じゃなくて、“別に私に言わなくてもいい事”だったのかもしれないし……』
涙が落ちる