第30章 呆然と失墜
五条…
その名前が出た瞬間
胸の奥が、少しだけ軋む
『…そっか…ごめん…納得は出来るんだよ…でもさ、私だけ知らなかったのって、置いていかれたみたいで嫌だった…って、皆に言ってもしょうがないんだけど…』
納得はできる
でも…
理解と感情は一致しないから
伊地知が反省モードに入る
「流鏑馬さん、私も心苦しかったので、正直、彼が生存しているのが流鏑馬さんにも伝わってホッとしています…すみませんでした」
硝子がポツリとこぼす
「悪かったよ…信頼してる相手ほど、隠されると地味に効くのは解る
とにかく、五条が帰ったら、紅海の気持ちをちゃんと伝えな?」
内緒にしておこう…と悟が言ったからと思うと
自分がゴネた事で、結果的に皆を謝らせてしまい
皆の前で、この気持ちを引きずるのは申し訳なく感じる
五条が帰国したら話し合おう…
その日、紅海は 、考える…
五条の事を何も知らなかったんだと気付かされる
数ヵ月前、伏黒の呪術師になった経緯を知った
五条が伏黒と姉の面倒を見ていたらしい
紅海に言わないといけない訳ではない
こういう時に自慢もしないし、他人に相談しないのが五条らしい
だが、紅海の中で、自分には何か言ってくれるのではないかと言う気持ちがあった
高専時代の数年と京都に配属されてから会っていなかった数年は
京都時代の方が長い…
『そりゃ、そうだよね…』
今まで、楽しく食事に行ったり、気にかけてくれたり
旅行に一緒に行ったからって、埋まる問題ではない
じゃあ、何に私はモヤモヤってしてるんだろ
悟が私の事を思ってやった事なのかもしれない
でも、モヤモヤする
考えても考えても答えが出なかった
いつの間にかソファで、うとうとして夢の中へ侵入する
自分じゃない自分が話しかける
「本当に愛されているの?
騙されているかもしれないと思わないの?」
『愛?解らない…』
「私が代わってあげようか?」
背後から声が聞こえる
『何を?』
「苦しい気持ちは慣れているから、私がいつでも代わってあげる」
『アナタは…苦しんでいるの?』
「ずっと苦しかった…だから代わって欲しい…」
スッと意識が戻る
『わ、寝落ちしてた…』
動きが鈍い…後味が悪い夢を見た気がするのに
紅海は、思い出せなかった