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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第30章 呆然と失墜


高専事務室

机の上には交流試合の資料が広げられている
高専の演習場…と言っても土地が広い
配置図、結界範囲、避難導線
赤いペンで何度も修正された痕を残していた

向かい側に座る女が、資料を一枚めくる
黒いスーツで無駄のない所作…綺麗な紅がひかれた口元
冥冥は視線だけを動かし、淡々と確認していた
「フィールドの高低差は?」
『あ、はい…ここが凄くて生徒同士の視界が切れるので、監視追加予定です』
「合理的だね」

紅海は肩の力を抜いたように笑った
『冥さんが立ち会ってくれるの、すごく心強いなぁ』
冥冥はわずかに口角を上げた
「私も上層部にやりにくいと思われたくはないからね…払うものを払ってくれれば、協力するよ」
ドライな口振りだけれど拒絶ではない
『あはは、そういう所、好きです』
無防備な笑顔だった

冥冥は小さく息を吐く
「……珍しい評価だ」
書類をまとめる
『今決まってるのはこのくらいです…ありがとうございました』
紅海が立ち上がった、その時
ポケットのスマートフォンが震えた
冥冥に軽く会釈をして別れる

『…七海?』
通話の文字をスライドする
『はい、もしもし?七海?』
ノイズ混じりの静寂…抑えた声が聞こえる
「流鏑馬さん…今から言うことを、落ち着いて聞いてください…まず、外部には漏らさないように」

事務室を見回す…冥冥は既に居ない

『えっ……な、なに?』
スマホの向こう側で足音がしている
走っている気配

七海建人の声は、普段より硬かった
「里桜高校に向かってください…そこに——虎杖悠仁君がいます」
紅海の思考が止まる
指先がわずかに震え身体が冷たくなる
『……虎杖くん?』
七海は迷いなく続ける

「等級としては強い…恐らく、流鏑馬さんが報告した呪霊と同じもの…ツギハギの呪霊です
私も向かっていますが…

彼を二度死なせるわけにはいかない」


七海は、冗談で人の死を軽く扱う人間ではない
だからこそ理解するより先に、身体が動いた
スマートフォンが震え、位置情報が送られてくる地図を確認する
『……虎杖くん』
声がわずかに震える

何も持たず事務室を飛び出した

死んだはずの少年が生きている
理解より先に、祈りに似た感情が胸を締めつけた
紅海は階段を駆け下りた
呪力が、無意識に放出される
里桜高校へ向かう
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