第29章 信頼と恋敵
══閑話══
机の上のスマホを何度か触る
少しいじって……そして発信
数コールで相手が出る
「はい、遊佐です」
「僕」
短く伝える
「どうしはったん?紅海ちゃんになんかあったん?」
「…紅海なんだけど…」
「…いや、何でもない」
「何やの?そっちからかけてきたと思ったら…珍しく歯切れ悪いし」
軽く笑う気配
五条は歩きながら天井を仰いだ
「いや、何でもない
紅海の事、ちゃんと送ってったよ」
「…そりゃ、良かった」
「お互いさ無自覚無防備には苦労するよね~?」
遊佐の声が慎重になった
「…よう解らんけど、何を急に、ぼくの事“同士”扱いしてんねん」
「だって事実でしょ、お前、紅海のこと好きじゃん」
電話の向こうで、 小さく息を吸う音
「五条さんこそ、その言い振り…自覚あるんやな」
「あるね~…別に競うつもりはないし
紅海が幸せならそれでいいと思ってた」
つい数時間前までは
「…ほう?」
五条は短く笑って告げる
「今日さ、紅海は京都行って、お前と会って、普通に帰ってきたんだよね?」
「…そうやけど?何の確認?」
「なんかムカついた」
電話の向こうで吹き出す声
珍しく遊佐が素で笑う
「ぶ、はは…五条さんでも、そないなるん?」
「なるよ…普通に」
「安心しました」
「何が?」
「神様みたいな人や思てたけど、ちゃんと人間やった」
五条は小さく舌打ちした
ださっ…プライドが遅れて刺さる
だが胸の奥の妙な引っ掛かりが、 少しだけ消える
「ほな追加で一つだけ」
遊佐が言う
「……」
「紅海ちゃんに変な事したら許しませんよ」
間髪入れず返す
「それ僕の台詞だから」
「お互い様っちゅう事で」
小さく笑い合う
恋のライバルだが敵ではない
紅海を本気で想っていると、 互いに知っているから
「…じゃ、切るよ」
「はい、おやすみなさい」
五条は窓から夜空を見上げた
想っているだけでいい…そう思っていた
なのに今日はっきり理解した
取られたくない…
しかも、自分は彼女を部屋に呼んでるくせに
他の男と親しくしてないか確認するとか…独占欲も甚だしい
「カッコ悪…」
五条は大きく息を吐いた