第29章 信頼と恋敵
空気が止まった
「は?」
間の抜けた声
「誰の?」
『悟の…』
悟は昔からモテてたから、彼女くらいいるでしょ
そうでなくても、悟の事好きな女の人はユニバの順番待ち程いそう
いや、なんで今そんなこと考えてるの…ナシナシ…今のナシ
視線を逸らして気まずい雰囲気
五条が額を押さえた
「……はぁ…紅海さ」
大きなため息と共に…
「僕、君に、彼女いるって言った事あった?」
『え?いや、ないけど…悟って、そう言うの、あんまり言わないタイプでしょ』
「じゃあどこ情報?」
真顔だった
本気で理解できない顔
『え、えっと…それは…』
「なに?」
『悟が…掃除できない時にして貰ってるって…だから、彼女かなぁって』
五条は一瞬黙り、 次に小さく笑った
「あれ伊地知ね?」
『……え?』
「僕が忙しい時、ちょっとした管理に来てもらってるだけ…」
『え…イッチー?』
「そ…色気ゼロのサポート」
紅海の耳がじわっと熱くなる
なに想像してたの私…
いやでも、イッチーが掃除するとしても…彼女がいないとは限らない
「後ね、彼女はいないよ?特定の人を作ると全世界の女子が泣くからね~」
冗談交じりで言う
少し身を屈めて視線を合わせた
「で?」
わずかに意地悪な声
「送らせてくれないの?」
紅海は少しだけ困った顔をして、 小さく笑った
『……じゃあ、途中まで』
「最初からそう言えばいいのに」
そう言いながら
ドアを開けて、紅海を外へ促す
「ほら、帰り道も2人だと寂しくないだろ?」
『うん、でもさ…そうなると、今度は悟が1人で帰るから寂しいよ』
隣で歩く紅海を見る
「そうだね…」
『じゃあ、今度は私が送ってあげようか?』
クスクスと笑いながら、五条を見上げる
「ぶはっ!なんだよ、そのヤギの手紙の歌みたいなやつ!」
『無限ループ?』
「だね」
面と向かって「送る」と言われ
隣に立たれると、 妙に意識してしまう
まるで普通の女性みたいに扱われている
いや、女性なんだけど…
落ち着かない…こそばゆい
昔はもっと違った
任務帰りに疲れていても歩かされて
「自分で帰れるでしょ?」と平然と言われて
からかわれて、 張り合って、 距離も雑で…
でも、それが嫌だった訳じゃない