第29章 信頼と恋敵
紅海は苦笑した
『それについては、報告書は出してるよ?悟も見たでしょ?』
「僕に言ってない内容の話…有るんでしょ?」
一歩、距離を詰められる
「…紅海、なんで僕に言わないの?そろそろ、そのパターンのドッキリは飽きてきたんだけど?」
わざと肩をすくめて表現するが、ほんの少しだけ寂しそうだった
紅海は視線を逸らし、小さく笑う
『悟、忙しそうだったし』
「関係ない…忙しいかどうかを決めるのは僕」
少し屈んで、目線を合わせる
「紅海に言っただろ?ピンチの時に助けに行くって」
『…大げさだなぁ』
照れ隠しのように言うと、五条は小さく息を吐く
「大げさじゃないよ」
そして、自然な動作で紅海の鞄を取った
「ほら帰ろ…話、ちゃんと聞く」
歩き出した五条の隣は当然のように空いている
紅海は少しだけ遅れて並ぶ
悟、わざわざ迎えに来てくれたのかな…と、胸の奥が静かに温かくなる
『皆、過保護だなぁ~』
少し照れたように笑う
『あ…嫌じゃないんだよ?でも、申し訳ないだけで』
五条は紅海を横目で見つつ歩幅を落とす
「紅海は昔から無茶するからね
限界を越えるまで止まらない…そこが良いところで、悪いところ」
『褒められてるのか、けなされてるのか…』
「6:4くらいかな?」
『ん~微妙…』
肩をすくめる紅海を見て、五条が小さく笑った
暫くして口を開く
「そういえば、晩飯食った?」
『まだ』
「じゃあ、どっか店に入る?」
紅海は困ったように笑い
『そーだなぁ…最近、外食ばかりだからなぁ…財布の中も空っぽだし…自炊コースかなぁ…』
その言葉に、五条の足が止まった
「ちょっと気になってたんだけど」
振り向く紅海
「紅海って結構、金遣い荒いの?」
『え?』
「任務、かなり入ってるよね?それなりの報酬は貰ってんでしょ?」
自分の任務報酬より若干少ないとしても
紅海の任務数を考えると、家計がカツカツなのが信じられない
五条の視線が鋭くなる
『あ~…うーん…』
紅海が言葉を濁した瞬間、五条の表情が変わった
「ちょっと待て…もしかしてお前」
紅海の視線が泳ぐ…五条の視線と合わない
「教師の給料しか貰ってないとか無いよな?」
『……』
沈黙こそ答えだった