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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第29章 信頼と恋敵


八月某日

夏の京都…
石畳から立ち上る熱気
遠くの寺の鐘がセミの鳴き声にわずかに混じる

交流戦最終打ち合わせは、あっさり終わる
紅海は最後の欄に印鑑を押す

これで仕事は終わり

午後からは、珍しく予定が空白だった
校舎を出ると、むわっとした外気が肌にまとわりつく
思わず目を細めた瞬間隣に影が並んだ

振り向かなくても分かる距離感
遊佐由布湯が、当たり前のように歩幅を合わせていた
『紅海ちゃん、今日はもう帰るん?」
『うーん、そーなんだよねぇ…』

紅海は空を見上げる
新幹線に乗れば、すぐ東京へ戻れる

だが
胸のどこかが、帰ることを拒んでいた
『せっかく来たんだから、とんぼ返りじゃ、もったいない気がして…ちょっとだけ、のんびりしたい気分なんだよね~』

「よなぁ」
遊佐は頷き
「ボクんちで、のんびり休んで貰てもええんやけど」
軽く自然な調子で言う
『ふふっ、ありがと…』
冗談だと受け止める
『本当…最近寝られてない気がして…休み必要だよ』

遊佐の視線がわずかに鋭くなる
「どしたん?悩み事とか?」
歩きながら、紅海は少し考える
言うべきか 言わないべきか…
『うーん…』

曖昧な前置きのあと
祭の日の出来事を、簡単に話した

金魚すくいの屋台、 違和感、 触れられた感覚、それから続く夢
内容までは思い出せない事

けれど、確実に胸の奥に何かが残っている
「……」

紅海が話し終えると、彼は静かに尋ねた

「で、五条さんは?何か言うてる?」
紅海の足がほんの少し止まる

『その…悟…には、言えてないんだよね』
視線が下に落ちる

『出張とか、他に色々有るみたいで、じっくり話すほど会えてないし…
それに悟、忙しそうだから…こんな事で相談するのも悪いし』

言った直後
少しだけ慌てたように付け足す
『別に遊佐くんが暇だから話したんじゃないよ?』

遊佐は小さく笑った
「分かってる分かってる」

軽く返しながらも

五条悟ならきっと怒ると考える
「なんで俺に言わないの?」と
それが想像できてしまう

そして同時に
紅海が自分のことを後回しにする事を知っている

「なるほどなぁ…じゃあ、立ち話もなんやし…」

商店街の影へ視線を向ける
「どっか店でも入る?」

紅海は少しだけ肩の力を抜いた
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