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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第28章 祭と涙


触れた瞬間、拒絶された
形を変えるどころか、逆に押し返された
あり得ない現象…だから面白い

「ねぇ、次はもう少し触ってもいい?」

背後から、穏やかな声が落ちる
「ダメだよ、真人」
暗がりから歩み出た男は額に縫い目が有る
柔らかな笑みで諭す…袈裟を着た夏油の姿をした何かだ

「彼女は私達の役に立って貰うのだからね…生かして捕らえなければならない」

真人が頬を膨らませる
「えー、つまんないな~…君って凄く慎重だよね」
夏油は軽く肩をすくめた
「そりゃあね」
夜空を見上げる花火の光りが届く
「千年以上も待ちぼうけをくらった身としては、慎重にもなるさ」

紅海には聞こえない
ただ胸の奥だけが理由なくざわついた

══
祭から戻ったあと
紅海は「何でもない顔」で部屋へ戻り、いつも通りに過ごし、いつも通りに眠った

暗闇…水の底のような静けさ
……ここ、どこ
夢なのか夢じゃないのか…
身体があるのかも曖昧な感覚
その時…何かが揺れた
魂の奥
真人に触れられたことで、本来なら起きない様な揺り動かされる

紅海の魂の中心に――三つ
一つ
今を生きる紅海自身の魂
二つ目
宿儺の魂の欠片
そして三つ目
最も古いもの
白く細い糸のような魂
それが、ゆっくり形を持ち始める


景色が平安の世に変わる

灯籠の光…白装束の若い女が座っている
瞳には、人を信じない静けさがあった
周囲には貴族や武人…誰もが彼女を見ている

だが、誰一人として「彼女自身」を見ていない
「巫女殿」
「この呪を祓っていただきたい」
「疫病にかからない身体を頂きたい」
命令、依頼、利用

巫女は微笑む完璧な笑みだ
求められる姿で有ろうとする

心の奥で思う…また、誰も、私を見ない
彼女は生まれた時から魂を視る事が出来た
魂に触れ動かせた
人の魂も呪いも自由に
だから人ではなく「道具」として扱われた
母親からも愛されない理由を、幼い頃に理解した
異能だから…怖いから…
――だから愛が欲しかった
ただ、それだけ
誰かに抱きしめられて
価値ではなく役目ではなく
「あなたが好きだ」と言われたかった

だが、それは与えられない
継承のためだけの愛など無い行為

彼女の瞳が歪む
なら奪えばいい…視線の先の圧倒的な存在
呪いの王まだ完全な神話になる前の存在…宿儺…
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