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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第28章 祭と涙


硝子の隣に座り、焼きそばを置いて割り箸を割る

『えへへ、パンダくんにわたあめ、真希ちゃんにヨーヨー釣り…野薔薇ちゃんにお面…伏黒くんに射的…棘くんに…あれ?』
「しゃけ…」
背後に立っている
『わっ!?え?なになに?』
狗巻が屋台を指差す…輪投げ
よし、行こう!
何故か、1人ずつ奢らされる紅海…
紅海は生徒たちへ声をかける
『花火までまだ時間あるし、各自自由行動にしよっか
連絡はすぐ取れるようにね?』
それぞれ、楽しそうにしている生徒達の背中を見送り、紅海は小さく息を吐いた
「お疲れ、先生」
『先生って程、何もしてないよ
逆にあの子達に引っ張られてる感じ…
悟みたいにはいかないね』

教師としての役割が一瞬、軽くなる
夏の夜…少し湿った風

笑い声や遠くから太鼓の音が聞こえる
——平和だなぁ

そう思った瞬間だった
ぞわり、と…空気が歪む感覚がした

こんな所で呪霊が出たら大変だ…
『……ごめん、ちょっと席外すね』
硝子は振り向かない
「はいはい、迷子になんないよーに」
『なんないってば!』
硝子は軽く手を振るだけ
彼女が何の理由で席を立ったかは解っている

紅海は人混みを抜けた
提灯の明かりが薄くなる場所を確認する
おかしいな……

その横を誰かが通り過ぎた
くすんだ水色の髪色
縫い合わせたような顔
一瞬だけ目が合った様な…
……今の呪霊?

その時、金魚すくいの屋台で
金魚が、一斉に暴れ出した
水が跳ねる、子供の悲鳴
金魚の身体が、ねじれている
生き物の形を保てなくなった“何か”
『……なに、これ』
呪霊?何か違う…理解が追いつく前に
トンっと背中に触れられた
ひやりと身体の奥が冷える
耳元で声が落ちる
「ねぇ、君…面白い魂してるね」
反射的に振り返ったが誰もいない

ヤバい…気を取られてた…触られた
心臓が一度強く脈打つ

桶の中では異形の金魚が跳ね続けている
周囲の人間がざわつく
「病気?」 「気持ち悪い…」
非術師にも見えている

暫くすると、異形に耐えられなくなったのか
金魚は力を失い浮かんで動かなくなった

水面が静まり亡骸だけが残る

完全には消えない…呪霊ではない証だ
紅海は小さく息を吐いた
『……最悪』
何者かに弄ばれたのが解った

遠くの人混みの中で、
誰かが楽しそうに笑った気配がした
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