第28章 祭と涙
いつまで、このメンバーと一緒にいられるか解らないから…
『でも、傑と悟は先月沖縄行ったんだっけ?任務で…』
空気が止まった
五条と夏油が一瞬黙る
触れてはいけない記憶だ
紅海は、内容までは知らされていない
その空気を断ち切るように硝子が言った
「ま、いいじゃん…皆で行こう?1年も誘ってさ」
そこから準備が始まった
浴衣をどうするか?行きたい屋台の話
花火の時間、待ち合わせ時間は?
珍しく、ただの学生みたいに
だが…祭の前日
任務で呪霊に襲われた少女を助けるため
紅海は服のままプールへ飛び込んだ
『大丈夫…』
濡れたまま笑って帰ってきて
その夜、熱を出した
それでも当日
誰にも言わず浴衣姿で現れた
少し顔色は悪かったが何でもない様子を装った
「お、皆ドレスコード決まってるね」
夏油が笑う
「馬子にも衣装的なやつだな」
五条がそっけなく言う
1年達も浴衣だ
灰原や七海も整った装いで立っていた
祭の灯り、人の波、屋台の香り
そして―
人混みを抜け賑わう屋台の中心
七海が振り返る
「待ってください、流鏑馬さんが…」
視線が泳ぐ
「さっき、街灯を曲がるまでは確かにいたんですが」
紅海がいない
次の瞬間
五条はもう動いていた
「先、行ってて」
振り返りもせず言う
「俺、紅海の呪力探してみるから」
人混みの中へ飛び込む
胸の奥が妙にざわつく
嫌な予感…理由は分からない
祭囃子の音が遠くに揺れている
人混みの中を、五条悟はほとんど歩幅を変えず進んでいた
人が自然に避けていく
術式を使っているわけではない。ただ、存在の圧が違う
……おかしい…呪力を探る
いつもなら、迷うはずがない
紅海の呪力は灯台みたいに目立つ
だが―薄い
掴めない…弱ってんのか?
わずかに眉が寄る
ようやく捕まえた反応は、祭の喧騒から外れた場所だった
神社の鳥居、石の柱に背を預け、しゃがみ込む紅海の姿
浴衣の裾が少し乱れている
「お前何やってんの?」
声をかけると、ゆっくり顔が上がる
『あ、ゴメン…』
少しぼんやりした笑顔
『石の鳥居が気持ち良くて…お祖母ちゃんに叱られそう…』
熱で思考が鈍っている声
五条はため息を吐いた
「そうじゃなくてさ…調子悪いの?」
『大丈夫…ちょっとしたら、合流するから』