第28章 祭と涙
芝生の上
生徒たちは思い思いに腰を下ろしていた
紅海は膝を抱えて座り、水を一口飲んだ
『私達の高専時代はさ、夏休みって言ったら――実家帰るの?とか、お祭りあるんだって~とか…もっと青春っぽい話してた気がするんだけどなぁ…
最近の子って、なに?ストイックなの?』
間髪入れず答えたのは釘崎だ
「そりゃあね、強くなりたいから」
紅海は小さく頷く
『それは、解らなくもない…私も、もっと強くなりたいから』
その言葉に、隣で座っていた伏黒恵が視線を向ける
「先生でも、上を目指すんですね…意外です」
『え、なんで?』
「もう完成してる側っていうか…」
生徒から見れば、そこは到達点に見える
紅海は少し考えてから答えた
『…守りたい人達が、いっぱいいるからかな』
少し離れた場所で寝転んでいたパンダが顔を上げる
「紅海、もっと楽しいことしろよ?この中で一番真面目だろ?」
『え?そう?伏黒君の方が真面目に見えるけど』
伏黒は淡々と返す
「俺は、やらないといけない事があるんで…その為に強くなりたいだけです」
その横で真希が口を挟む
「確かに、紅海ちゃんって教師か術師の顔しか見たことないな」
「だな…息抜きしてるイメージない…プライベート何してるんだ?」
パンダが続く
『まぁ…ここか任務でしか会わないもんね?』
紅海は考える
『うーん…私は…家でぼーっとするとか?』
沈黙
なんだそれ?
もっと遊べよ
大人ってそうなのか?
生徒全員の無言のツッコミが空気に満ちた
紅海は首を傾げた
『え、なにその顔』
その時、釘崎が指を突きつける
「じゃあさ!」
全員の視線が集まる
「一日くらい紅海ちゃんと青春しに行く?」
『…青春?』
「海!プール!祭!野外ライブ!ショッピングでもいいし!」
紅海は瞬きを繰り返す
少し戸惑ったように笑った
『え、私も行っていいの?』
「だから誘ってんでしょ」
釘崎が呆れ顔で言う
伏黒が小さく息を吐く
「先生も…たまにはいいんじゃないですか?」
真希も肩をすくめた
「交流戦前の息抜きってことでな」
パンダが手を叩く
「決まり。紅海強制参加な」
『強制!?』
笑いが広がる
その輪の中心で、紅海は少しだけ戸惑いながら
ほんの少し、嬉しそうに笑っていた