• テキストサイズ

【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第28章 祭と涙


八月初旬

高専の敷地は、蝉の声が凄い
アスファルトの照り返しが強く熱が容赦なく残る

普通の学校なら、もう完全に夏休みだ

だが交流戦を控えた生徒たちは帰省よりも鍛錬を選んでいた
あるいは――選ばざるを得ない世界にいるのか

訓練場の中央で紅海が軽く肩を回す
向かいには、戦意を隠さない顔をした釘崎
「ほら、紅海ちゃん!もういっちょ!」

紅海は思わず笑った
『ちょ、野薔薇ちゃん、これで何回目?』
本当に、赤ん坊が気に入った玩具を何度も落とすみたいだ
負けるたびに「もう一回」

その執念は呪霊より粘着質かもしれない
「だって、全然紅海ちゃんに勝てない!」

ルールは単純
互いの背後につけた安全ピン
そこに結んだリボンを先に奪った方が勝ち

呪力使用は最低限…体術と判断力の訓練

――そして結果は
紅海の連勝

『そりゃぁ、これでも教師ですから!
人生経験で負けたとしても呪術師としては踏ん張らせて!』

見学していたパンダが腕を組む
「人生経験で負けるのは、それはそれで問題じゃないか?」

さらに後方から冷静な声
「しゃけ」
何を言っているか不明だが、狗巻は完全にツッコんだ
真希が呟く
「確かにな……紅海ちゃん、人生経験浅そうだもんな…すごく」
「しゃけ」
『えっ、なんで!?』
一瞬だけ隙が生まれた、その刹那
野薔薇が踏み込んだ
低く、速い!釘を打つ時と同じ迷いのない動き
だが――
紅海の身体がふっと消える
いや、消えたように見えた…

次の瞬間、紅海は野薔薇の背後に回り込み
指先がリボンに触れる

するり…赤い布が解け落ちた

「……っ!」
野薔薇が振り返る
悔しさと驚きが混ざった表情
紅海は息を整えながら笑った

『はい、また私の勝ち』

足運び、間合い管理、相手の呼吸を読む感覚
カポエラ由来の回転軸と、パルクール的な空間把握
呪力は補助に過ぎない

術師として積み上げた「生存技術」そのものだった
「……やっぱ強いな、紅海ちゃん」
野薔薇が悔しそうに笑う

紅海は少し照れたように肩をすくめた
『野薔薇ちゃんも強くなってるよ。最初より距離詰めるの速いもん』
評価は本気だった
だからこそ、生徒たちは繰り返し挑む
教師としてではなく「超えたい相手」として…
/ 285ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp