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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第27章 理由と利用


══閑話══
さわやかな朝日が差し込むギャラリー


そこに立つ男、夜蛾正道は、腕を組み、真剣な眼差しで展示を見つめていた

一日三名限定
可愛いもの好きの間で語り継がれる幻の作家――
るるあるる巨匠の個展

滅多に開催されない展示のチケットを手配したのは、補助監督の伊地知だった

「学長、お忙しいでしょうから……気分転換に…本当にすみません」

何故謝られたのかは謎だが
差し出された封筒を、夜蛾は無言で受け取り、内心で深く感謝していた

展示室には、手のひらサイズのぬいぐるみから、抱きしめられるほど大きな作品まで並ぶ
見た瞬間に心がほどける作品だ

一体の作品の前で足を止めた

丸い体少し不格好な耳、驚くほど繊細で、まるで感情が宿っているようだった

「……見事だ」
呪骸を生み出す術師として、造形と魂の関係を誰より理解している
これは単なるぬいぐるみではなく
作者の“想い”が縫い込まれている

ふと視線を上げると、展示奥に人だかり
――まさか!
小さく掲げられた札

本日、作家在廊

夜蛾の目がわずかに見開かれる
本人が……来ているのか!

滅多に姿を見せない人物
この機会は二度と訪れない可能性すらある

その瞬間…スマホが震えた
嫌な予感
画面には「流鏑馬」の文字

通話を取る
『先生!楽厳寺学長がもう到着されてます!』

一瞬、思考が停止した

「……なぁにぃー!!」
響いた大きな声

来場者とスタッフがざわつく
夜蛾は咳払いをして姿勢を正す

「……事情は理解した。すぐ戻る」

通話を切る
視線が、再び展示へ向く


だが――
学長としての責務が優先だ

断腸の思いで背を向ける
入口まで歩きながら、何度も振り返りそうになるのを堪えた

こうして夜蛾正道は、後ろ髪を引かれる思いのまま高専へと向かった

――後日
伊地知は、謝罪を込め、再び奇跡的に最終日のチケットを確保した!
夜蛾は珍しく伊地知からチケットを受け取り笑顔で頷いたらしい
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