第27章 理由と利用
外に出されて待機していた三輪霞が姿勢を正す
五条が歩み寄る
さっきまでの空気はもうない
「待たせたね?ありがとう」
にこりと笑う
それだけ言って通り過ぎていく
三輪は固まった
背中が遠ざかる
数秒後――
え、今…また声かけられた!?
五条悟の方から!?
ヤバいヤバいヤバいヤバい!!
だが外面は完璧
京都校の術師として、静かに一礼する
五条が曲がり角を曲がった瞬間
一人で静かに悶絶する三輪だった
数十分後
高専・応接室前
資料を抱えた紅海は足を止めた
廊下に立っているのは――
三輪霞
『えっ!?霞ちゃん……早くない?』
「流鏑馬先生、お久しぶりです」
時計を見る
まだ開始1時間以上前のはず
『部屋の設えしようと思ってたんだけど……もしかして』
三輪が静かに応接室の扉を指す
「学長、いらっしゃってます……」
『……えっ?』
なんで!?あと1時間先じゃないの!?
状況が理解できない
だが次の瞬間判断する
と、とりあえず!!夜蛾先生に連絡!!
紅海は携帯をすぐに取り出し連絡しながら給湯室へ向かう
電話を終えると、お茶とお菓子を用意して
一旦、深呼吸…
そして――入室する
紅海は楽厳寺嘉伸へ丁寧に茶を差し出す
『遠いところありがとうございます。長旅でお疲れじゃないですか?』
「流鏑馬か…東京はどうだ」
私の事、覚えててくれたんだ嬉しいな…と、
『京都を離れるのは寂しかったんですけど、同期もいますし……生徒達も可愛いです』
嘘のない笑顔
「浅葱は元気にしているか」
『はい…私より元気です…
今日、学長がいらっしゃる事伝えたら
学長には特に会わなくてもいいって言ってました』
冗談ぽくクスクス笑う
「……相変わらずなやつだな」
『ふふふっ、京都の話をすると、祖母も同じように学長の事を聞いてくるんですよ?』
「ふん…」
祖母の浅葱と、楽厳寺学長との間に何があったかは
紅海は知らない…
楽厳寺が湯呑を置いた、その時
――勢いよく扉が開いた
「楽厳寺学長、申し訳ない!」
入ってきたのは夜蛾だ
紅海が安堵する
『夜蛾先生!良かったぁ……』
楽厳寺が静かに視線を向ける
「随分と待たせる気でおったようだな」