第27章 理由と利用
「……ご、ご迷惑をおかけしてすみません」
『ううん、全然。調整大変だよね、いつもありがとう』
優しい声…完全に善意だ
伊地知、瀕死!
罪悪感がすごい……
通話を切ったあと
伊地知はスマホを見つめたまま小さく呟いた
「…五条さん……これ、あとで絶対怒られるの私ですか……」
次の日…
交流戦打ち合せ当日
高専・応接室
静まり返った空気
「夜蛾は、まだかのぉ」
待ちぼうけして座るのは京都校学長――楽厳寺嘉伸
そこに、夜蛾はしばらく来ない事を伝えて入ってくる五条
脚を組み、背もたれにもたれて対面し、軽口を叩く
三輪に注意されるもすぐに出ていく…と、三輪はあしらわれる
いつもの軽い姿勢で、虎杖の件、呪霊に襲われた事を告げ
宣戦布告とも取れる言葉を残す
「紅海の呪力を弄られるとか、気分悪いこともされたしね
ほんと……笑えない」
楽厳寺は静かに目を閉じた
沈黙後…
「前から気になってたこと聞いていい?
そこの君、悪いけど、ちょっと出ててくれる?」
三輪は声を掛けられた事にテンパりつつ出ていく
「じゃ、本題…紅海が京都から東京へ戻された理由」
楽厳寺の動きがわずかに止まる
五条はもう結論を知っている顔だった
「紅海の術式、領域展開…条件付きとはいえ完全に人間を防御できる」
静かな声
「非術師を守るには最適だ」
指を組む
「つまりさ――」
薄く笑う
「上層部や公人守るための“保険”として東京に戻したんでしょ?」
「百鬼夜行でビビった連中が、“次が来たら自分達を守れる盾”を欲しがった」
視線が冷たく楽厳寺に落ちる
「紅海なら命令されたら喜んで命張るって知ってるからね」
「……ただのシェルター扱い」
声が低くなる
「物みたいに使われてんのが気に入らないんだよ」
楽厳寺はわずかに息を吐いた
「はて?そんな理由で京都の術師を減らした覚えはないが」
予想通りはぐらかす
「あ~、そう?
半年前の事も忘れちゃった?脳トレ始めた方がいいよ?おじいちゃん」
空気が張る
だが五条は立ち上がった
もう答え合わせは終わった
「まぁいいや」
扉へ向かう
そして振り返りもせず言う
「次、紅海を雑に扱う事があれば
何が起きても知らないよ?」
一瞬だけ呪力が漏れる
「じゃ…また、後で」
扉が閉まる