第26章 死と距離
高専・職員室
日は落ちて、蛍光灯の光が窓から漏れる
紅海は、書類を広げたまま電話を机に置き
スピーカー状態で通話をしている
まだ完全ではない呪力の流れを庇うように、机に重心を置く
『えっ、楽厳寺学長も来るの!?遊佐くん……嘘と言って……』
電話からは落ち着いた京都弁が聞こえる
「いや、ほんま、嘘と言いたいんやけど……行かはるらしいわ」
紅海の手が止まる
『ふぇぇ……マジかぁ…学長ってさ…昔ながらの人かと思えば
意外にファンキーなファッションセンスしてて…接し方に悩む人』
視線が机の上を泳ぐ
「紅海ちゃんな…とりあえず仲良くなれんか考える所、
そこが、紅海ちゃんのええ所やけどな…矛盾した理解できん人もおるんよ」
『とりあえず、お茶菓子とお茶買っておこうかなぁ』
「紅海ちゃん」
遊佐由布湯の声が小さくなる
「そこ、気ぃ遣うとこちゃうねんけど」
『え?』
「打ち合せしに来るんやで?歓迎会ちゃうねん」
『でもさ、印象って大事じゃない?
最初に場の空気が柔らかかったら、変な衝突減るし……』
電話越しでも分かる
遊佐は少し笑っている
「あーもー……紅海ちゃん、相変わらずやな」
『なにが?』
「はは、まぁええわ、そこん所は紅海ちゃんの思うようにしたらええよ、本題に入ろか?」
『うん』
交流戦資料
会議配置図
来客リスト
等、打ち合わせに使う資料を作る
慌ててペンを握る
15分程、内容や資料の形式などを話し合い一段落つく
「それにしても、紅海ちゃん夜、遅なったけど、大丈夫なん?
こないだ負傷して大変やったって聞いてそんな経ってないやろ?」
紅海は一瞬黙る
首元の歯形も、他の怪我もほぼ痕は消えかけている
けれど呪力の循環はまだ鈍い
『大丈夫だよ、任務じゃないし』
軽く言った
だが遊佐は聞き流さない
「紅海ちゃんが、ぼくに言うてない事も、京都側では聞いとるで…今回、宿儺の器のせいで、えらい目に遭ったって」
紅海の指先が止まる。
『違うよ…虎杖くんは悪くない…逆に私が弱かったから…』
電話の向こうで、椅子が軋む音
「はぁ……
五条さん、相当機嫌悪いらしいで」
『え?』