第26章 死と距離
五条の六眼には分かった
紅海が告げないので確定ではないが…
もっと直接的な接触があったことも予想が出来た
だが、今それを言葉にするのは、紅海をさらに傷つけるだけだと解っている
紅海は一通り、報告を終えて
五条に気付かれていないか気にしていた
意識が薄れる前…自分の記憶が間違えてなければ
宿儺の唇が、自分の唇に触れた感覚……今思い出してもショックだ…
ただの呪力を直接的に繋ぐ行為なのだが…
報告としては情けなくて言えなかった
六眼なら気付いているかもしれないけれど
もし聞かれたら、ぼやかそう…
五条は椅子から少し身を乗り出す
「……紅海」
名前を呼ぶ声が、珍しく真剣
「今回はさ…君が悪いんじゃない」
言い聞かせるみたいに…
「……僕がいないと、すぐ無理して、ボロボロになるの、やめてくんない?」
紅海が小さく頷く
『……努力する』
五条の胸の奥で、抑えていた感情が静かに沈む
触れられた痕を見てしまった怒りも
奪われた呪力への嫌悪も全部飲み込む
――今は紅海自信のフォローが必要だ
「ちゃんと休みな」
『ありがと…大丈夫だよ』
立ち上がる
扉へ向かいながら、振り返らずに言う
「暫く、ココいるんだろ?
暇つぶしに呼んでくれたら、いつでも来るから…ね?」
扉が閉まり、静寂が戻る
紅海は天井を見上げる
胸の奥の罪悪感は消えない
病棟の廊下
ドアの前で、伊地知が姿勢よく立っていた
足音に気付き、振り返る
「五条さん」
「お待たせ」
いつもの軽い声音
だが伊地知は、わずかな違和感を感じ取った