第26章 死と距離
放課後
西日に染まる高専の門前
『あれ?虎杖くん、今日は三人一緒じゃないんだ?』
門の外へ出ようとしていた虎杖悠仁が振り返る
「あ、紅海先生…伏黒は分かんないけど、釘崎はショッピング行ってくる~って」
『そっか、たまには一人の時間も大切だし、まぁそんな日もあるよね~』
柔らかく笑う
虎杖は少しだけ考えてから言った
「先生、温泉旅行楽しかった?」
『うん、そーだね。久しぶりに楽しかっ……』
言ってから止まる
あ…しまったー!
脳内で警報が鳴る
皆には内緒にしていたはずなのに
虎杖は「あーやっぱり」と頷いた
「釘崎の読み当たりか」
やっぱり野薔薇ちゃんか…女子の勘は凄い…
私には備わってないんだけど…どうしてだろう
虎杖の様子は探りではない
ただ純粋に確認しただけ、という空気
だからこそ余計に油断した
『あの、虎杖くん……この事は他の子達には内緒で……』
自分の口許に人差し指を付けて、小声になる
虎杖は目を瞬かせた
「え?あ、はい!大丈夫だよ、俺、口固いからね」
超笑顔!眩しいなぁ…この子は
紅海は自販機へ歩き、硬貨を入れる
ガコン、と音
『はい、口止め料』
「え、いいんすか?」
『内緒の共犯ね』
屈託なく笑う虎杖を見て、紅海も少し肩の力が抜けた
並んで門の横のベンチに座る
夕方の風が静かに吹いた
缶を開けながら虎杖がふと聞く
「紅海先生って、昔から呪術師なんすか?」
『うーん……そうであって、そうじゃない、かな』
少し考えて言葉を選ぶように視線を落とした
『小さい頃にね、両親が呪霊のせいで、いなくなっちゃって』
殺された事をボヤかすが虎杖は感じ取って動きが止まる
紅海は淡々と続けた
『それから呪術師の祖母に育てられて…まぁワタシも昔から呪霊は見えたし…
神社でお祓いやってる家だったし、気付いたらこっち側にいた感じ?』
重くならないよう、わざと軽い声で締める
『だから「なろう」と思ってなった訳じゃないんだよね』
少しの沈黙
虎杖はジュースを握ったまま言った
「……俺も、じいちゃんに育てられて…この間、亡くなって、もう居ないけど」