第25章 休暇と浴衣
「……仕事帰りだ」
夜蛾の視線が二人を往復する
五条の手には少し大きなカバン、紅海はリュックで
紙袋が手にいっぱい
そして私服で並ぶ2人
「もしかして……」
連休を取ったことは把握していた
だが…たまたま同じ連休なんだろうと思っていたのに
「そ、温泉旅行〜いやぁ疲れが取れる取れる…取れすぎてお肌つるんつるん」
悪びれない声
「まさか、二人で?」
五条は、肩をすくめて、オーバーリアクション
「え?なんかおかしい?」
『ちょ、悟!!』
紅海が慌てて五条の口を塞ぐ
『誤解されちゃうから!』
五条は目だけで笑う
夜蛾は腕を組んだまま、しばらく黙る
高専時代から見てきた二人
問題児と、周囲を和らげる少女
衝突も多く…主に五条が原因だが、距離も独特だった…
だが今、目の前にいる二人は、あの頃よりずっと自然に並んでいる
「……仲が良いとは思っていたが」
言葉を選ぶように続ける
「そうか…そういう関係だったか」
『ち!違います!』
慌てて即答する紅海
一拍遅れて
「そういう関係って?なに?ねぇ?」
わざとらしく首を傾げる五条
紅海が五条の袖を引っ張って、違う違う!と、首を振っている
その頬は少し赤い
夜蛾のこめかみに青筋が浮く
「悟…お前な…からかうんじゃない」
「はーい」
2人は教師になった今でも――あの時の延長線に見える
夜蛾は小さく息を吐いた
「はぁ…まぁ…休めたなら何よりだ」
それだけ言う
死が隣り合わせの世界で、穏やかな時間は貴重だと知っているから
『はい、楽しかったです』
「だね…」
夜蛾は頷き、去り際五条を近くに呼ぶ
「……悟」
「ん?」
「紅海を、あんまりからかうんじゃないぞ」
「からかってるつもり無いよ?むしろ本気」
夜蛾は一瞬だけ振り返り、紅海を見る
どこか危うい均衡の2人
そして、何も言わず、そのまま去っていった
静けさが戻る
『……絶対誤解された気がする』
「えー?別にいいよ」
『よくないよ』
少し離れて歩き出す紅海
五条は紅海の肩に体当たりして小さく笑う
『わ!もう!』
「晩飯、食べて帰ろうよ」
『ん~…じゃあ、軽くラーメン行く?』
「いいね~」
旅行の空気をそのままに…2人は楽しそうに歩いていく