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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第25章 休暇と浴衣


夕方の駅
観光客で少し混み始めたホームに、発車音の余韻だけが残っていた
電光掲示板には――次の列車、45分後

「……マジか」
五条がぽつりと呟く

目の前を、さっきまで乗るはずだった電車が遠ざかっていく
計画していた帰路
時間も乗換も、きっちり頭に入れていたはずだったのに

「はぁ……」
珍しく、肩が少し落ちる

足湯に展望台
最後に寄った甘味処
そして、お土産屋で、自分の分と自分の分と自分の分を迷って買った
そう…自分が寄り道しすぎた結果だ

紅海も楽しそうにしていたから
――まあ、止めなかったのは自分だけど

数秒だけ本気で反省する
それから
「……ま、遅れちゃったもんは仕方ないよね〜」
あっさり笑顔で顔を上げる

「そういう時もある」
完全に開き直った声

普通ならここで
大人なんだから、時間管理くらいして欲しい
どれだけお土産買うのに悩んだんだ
とか、そんな反応が返ってくるはず

そっと、隣を見ると
紅海は、怒ってもいなければ、困ってもいなかった

むしろ

『ふふふっ……』

小さく笑った

「……なに?」
『悟らしいよねぇ』
優しい声
『そういうポジティブなところ、悟の良いところ…ふふっ』

五条の思考が、一瞬止まる
責めない呆れない。
ただ、受け入れてくれる

「……」
言葉が出ない
こんな反応をする人間、ほとんどいない
大抵は自分の軽さに振り回されて、最後には疲れる…
特に伊地知とか七海とか

でも紅海は違う
失敗も、予定外の事も
まるごと受け入れて笑う


『ね、時間できたしさ』
ホームのベンチを指さす
『ちょっと座ろ?飲み物買ってくるね?』
当たり前みたいに言う
ただ、一緒に過ごす時間が延びたね~ってくらいの顔

五条はゆっくり息を吐いた
……こういうとこなんだよな
好きになる理由

隣に座る
夕方の光が差し込んで、影が並ぶ

ホームのベンチに腰を下ろしながら、五条は視線だけ横へ向ける
紅海は本当に、何も気にしていない顔をしていた
ため息も、責める言葉もない
『今日の朝のバイキング美味しかったよね~』
とか、楽しかった事を話しながら穏やかに座っている

普通さ誰だって少しくらい言うよ
「悟のせいで電車のがした」とか「家に早く帰ってやる事あった」とか
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