第25章 休暇と浴衣
完全に遊んでいる顔だった。
でも、引く気は一切ないらしい
紅海は真剣に悩み始める
おんぶは……浴衣、絶対崩れるよね
帯も緩みそうだし、背中に密着するのも妙に意識してしまう
かつぐのは論外……誘拐されてる人みたい
残る選択肢は一つ
『……じゃあ、だっこ』
言った瞬間、五条の口角が上がった
「了解」
次の瞬間、視界がふわりと浮く
『えっ…』
膝裏と背中に腕が回り、身体が完全に持ち上げられる
そう…典型的な、お姫様抱っこだ
『ちょ、悟!?これ想像してた“だっこ”と違う!』
「僕の中ではこれが正式な“だっこ”だけど?」
悪びれもない
紅海の浴衣の袖が揺れて、距離が一気に近くなる
逃げ場がない
軽……
思ったよりずっと華奢で、体温が近い
そういえば、ずいぶん前に紅海が熱を出した時に、ベッドまで運ぶのに同じ事したっけ
あの時は、緊急だったから軽い以外に何も感じなかったけど
今、同じ事すると…
凄くヤバい…何がヤバいと言えば
腕の中に収まる体の柔らかさとか
浴衣越しに伝わる体温とか
自分に体重を預けている無防備さとか
全部
意識しないようにしても、勝手に入ってくる
平然としてるふり…最強らしい余裕
でも、全部、演技…
本当は、離したくない
旅館までの道が、やけに短く感じる
だから五条は、わざと“落とさないように”って理由で歩幅を少しだけゆっくりに歩く
紅海が腕の中に収まる感覚が妙にしっくりきてしまう
五条は平然と歩く
『降ろして、歩けるってば!』
「無理~さっき痛そうだったし」
『見られたら恥ずかしい!』
「見せてるんだよ」
さらっと言いながら、腕に少しだけ力を込める
逃がさないみたいに
心臓がうるさいのは、多分歩いているせいじゃない
「それに、高専ん時さ…傑に同じ事されてたよね~?僕、覚えてるよ」
『なっ!?それ、いつの時の事、持ち出してんの!?』
「あの時、紅海、全然嫌がってなかった」
わざと、口を尖らせて文句を言う