第25章 休暇と浴衣
2人で歩きながら、先ほどの、酔っぱらい事件について考え込んでいた五条は
ふと現実に引き戻される
『悟…ごめん、ちょっと、そこのベンチ座っても良い?』
「どした?」
紅海は曖昧に笑って、少しだけ足をかばうように歩く
『うん、ちょっと…』
「??」
ベンチに腰を下ろすと、紅海はサンダルを脱いだ
かかとと甲の部分の皮膚が赤く擦れている
「あー…靴擦れ?」
『下駄履きなれないからと思ってサンダルにしたんだけどさ、新しく買ったやつだったからかな?』
困ったように笑う
『あはは、やっぱり、履きなれたやつにしとけば良かった…』
痛いはずなのに、平気な顔をするその癖
五条は無言でしゃがみ込んだ
「見せて」
『え、いいよ別に——』
「よくない」
軽く足首を取る
足首にに触れた瞬間、紅海がわずかに息を止めたのが分かった
…紅海って…こんなことで緊張するんだ
さっきの出来事が、頭の奥でまだ燻っている
知らない酔っぱらいなんかに触れられたくなかった
親指で、そっと赤くなった部分の周りを確かめる
「絆創膏、買ってこようか」
『…いいよ、旅館、もう少しだし』
「我慢するなよ」
『だって…』
五条はわざとらしくため息を付いて腕を組んだ
「仕方ない、紅海に選択肢を与えよう」
芝居がかった声
「いちばーん!おんぶー!」
指を一本立てる
「にばーん!だっこ!」
二本目
「さんばーん!かつぐ!」
三本目の指を立てる
満足げだ
「選びなよ?」
『え!?いやいや、どれも恥ずかしいよ!』
即答だった
頬がほんのり赤い
その反応が面白くて、五条は口角を上げる
「痛いんでしょ?どれか選ぶまで旅館に帰さないよ?」
『横暴すぎない!?』
「患者に優しい医療方針がコレです」
『絶対違うよそれ』
紅海は困ったように笑いながら足元を見る
確かに少し体重をかけるたび顔が歪む
五条はそれを見逃さなかった
「ほら…早く」
一歩近づく
逃げ場を塞ぐ距離だ …
たまに、五条はこう言う人を困らせる事をする
それはそれで、紅海を思っているからこそだろうが