第25章 休暇と浴衣
男が顔をしかめる
「なんだよ兄ちゃん」
「連れなんだよね、その子…
マジで汚い手で触んないでくれる?」
声は穏やかだが、圧がある
何故か、一般人には理由が分からない恐怖が混み上がってくる
男達の肩がわずかに引く
「は?何だよ?」
「別にいいじゃ――」
手首が、ほんの少しだけ強く握られる
痛みが走る程度
逆らえないと理解させる力
「彼女、やめて下さいって言ったんだよね?」
静かな声
男は舌打ちして手を引いた
「チッ、ノリ悪…行こうぜ」
「はぁ〜萎えるわぁ」
去っていく男達
五条はしばらく、その背中を睨み付ける
いつも、何があっても余裕な顔をしているのに…
険しい顔をしている
彼の中で
遅れた事に腹が立っている
気付いてたのに、様子見してた
何やってんだ僕…
振り向き紅海を見ると
少し驚いた顔で立っていた
『悟…』
五条は一歩近づく
「大丈夫?」
紅海は小さく頷く
『うん…ごめんね、私、うまく流せると思って…あはは』
その言葉で胸の奥に火が付いた
「紅海が謝るとこじゃないでしょ
そもそも酔っぱらいだからって、調子乗ってる意味が解んないよね…ほんと、最悪」
『ごめん…私がもっと拒否ってれば…』
少し間を置いて
「違うでしょ……触られてたじゃん」
ぽつりと漏れる
紅海が目を瞬かせる
五条は視線を逸らして頭を掻く
「何だよ、僕でさえ触ったことないのに」
言ってから自分で止まる
あ…
沈黙
紅海の頬が一気に赤くなる
『えっ!?』
「……いや今の無し…」
「箱入り娘の紅海を触るなんて!みたいなやつだよ」
珍しく誤魔化す
でも言った本人の耳が少し赤い
袋を差し出す
「はい、一緒に食べるだろ?」
そして紅海の手首を軽く取り歩き出す
離したくないから
「紅海、絡まれるから、もう少し人少ないとこ歩こ」
紅海は小さく頷く
さっきまで怖かったはずなのに
今は隣にいる悟の体温が、妙に安心する