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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第25章 休暇と浴衣


夕方になり、山の向こうに日が落ち始め、温泉街が橙色に染まる
紅海が小さく言う
『こういう、曖昧な色の時間、好きだなぁ』
五条は隣を歩きながら答える
「僕も」

紅海が隣にいて、同じ景色を見ている
それだけで、十分に幸せだった
そして五条の中で、確実に欲と言う感情が生まれている
――この時間を、終わらせたくない

そして、紅海は歩きながら、ふと考えていた
悟といられる時間、こんなに楽しいんだな…
特別な会話をしているわけじゃないし
派手な出来事があるわけでもない

でも隣にいるだけで、妙に心が軽い
明日の夜には東京に戻って、また任務と授業の日常が始まる
それも、嫌ではない…むしろ、それしか出来ないから

でも…この時間が終わっちゃうんだなぁ
少しだけ寂しさが混じる

その横で、五条は紅海を見ていた

歩幅を頑張って合わせてくる癖
店を見つけるたび楽しそうに足を止めるところ
どんな冗談でも笑ってくれる

…なんでこんなに可愛いんだろ
言葉には出さない
言えば壊れる気がする距離だから

「あ!」
五条が軽く手を叩く
「もうこんな時間だ、そろそろ旅館行く?」
『あ、うん』
紅海は頷いてから一瞬だけ固まる
頭の中に遅れて浮かぶ問題
部屋…予約は全部悟が取っている

つまり…知らない
2室なのか、1室なのか
聞くべきか…でも聞いたら、変に意識してるみたいで恥ずかしい

歩きながら、紅海の思考だけが忙しくなる
普通は別だよね?いやでも2人で旅行って事は?

五条はその様子を横目で見ている
分かりやすい…考え込み始めると少し無口になって、そわそわしてる

「紅海?」
『…うん?』
「疲れた?」
『ち、違うよ!元気!』
五条は少しだけ笑う

五条の中では最初から答えは決まっている
2室…理由は単純
紅海が安心して旅行を楽しめることが最優先だから

告白だの付き合うだの関係無い彼は、紅海との関係を急ぐ気はない
境界線を越えることで、この時間が壊れる方が嫌だった
旅館に到着すると木の香りのする落ち着いたロビーが迎える
受付が確認する
「五条様、本日は二部屋でご用意しております」

紅海の肩が、ほんのわずかに下がり安心したのが解る
五条はそれを見て、やっぱ気にしてたんだなと、内心可愛くて、くすりと笑う
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