第25章 休暇と浴衣
訓練場の端、ベンチに座った五条はスマホを片手に真剣な顔をしていた
普段なら任務報告すら片手間で済ませる男が、画面をスクロールしては止まり、また戻る
温泉宿一覧
評価
露天風呂
客室写真
指先が妙に慎重だ
「先生」
声をかけたのは釘崎だった
「ちょっと…浮かれてない?」
五条は顔も上げない
「え?何が?」
横で虎杖が首をかしげる
「五条先生っていつもこんな感じじゃね?」
「違うわよ、女の勘ね」
伏黒が小さく息を吐く
「…最近、輪をかけて軽いな」
その瞬間、五条が顔を上げた
「恵、教師に対して言葉選ぼっか?
浮かれてんのは事実だけどね~」
「否定しないんですね」
五条は笑って誤魔化すように立ち上がる
「いやぁ?ただの計画だよ計画…
僕にだって休暇は必要だからね~」
スマホ画面を覗き込もうとする釘崎
「なになに?旅行?誰と?」
「秘密〜」
「怪しい!秘密ってことは誰かと行くのね」
「怪しくないよ!健全っ!健全な旅行でっす!」
釘崎は、紅海の顔が一瞬よぎる
ん?旅行?まさかね…
伏黒がぼそっと言う
「健全って言う時点で怪しいんですよ」
五条は軽く肩をすくめた
何を言われようが、かなり機嫌が良い
伊地知が調整した任務表を思い出す
本来こちらに回るはずだった案件が、別の術師や一年の実地研修へ回されている
伊地知は、ほんと出来る男だよ
五条は珍しく心の中で感謝した
紅海と何も背負わず過ごせる時間が確保された
それだけで十分だった
数日後
廊下の窓際
紅海は資料を抱えたまま振り向く
『あ、悟、どしたの?』
五条は自然な顔で隣に立つ
「温泉行きたいって、僕、言ってたでしょ?」
『あ、うん、旅行の話だよね?』
頷く…
「一泊で」
『……え?一泊!?』
大きな声を出し過ぎて、慌てて口を押さえる
やっぱり、反応が分かりやすいと五条は少し笑った
「旅行だもん…当たり前だろ?
それに、日帰りとか、なにも楽しめないよ
温泉は一泊に限るね~」
確かに…温泉日帰りとかプランもあるけど
宿泊の方が落ち着ける…って納得しちゃったけど
一泊…って、ハードル高すぎる