第24章 憧れと二次会
══閑話══
夕方の医務室
「…温泉?」
家入硝子はカルテから目を上げ
『うん、悟がさ…旅行に行きたいって』
紅海は椅子に浅く腰掛け、膝の上で指を絡めた
落ち着かない時の癖だった
『でも、二人で遊びに行くのって、高専以来なんだよね
なんかさ……ちょっと緊張してきちゃって』
「悟に緊張?珍しいね?」
硝子は小さく笑う
「いつも通りでいいでしょ?
あんた達、しょっちゅう飲みに行ってるじゃない」
『それは…仕事帰りとかだし…』
言いながら、自分でも理由になっていないと分かる
紅海は視線を落とした
「悟が誘ってきたんでしょ?」
『うん』
「じゃあ、あいつは“紅海と行きたい”だけ
なんも、緊張すること無いよ」
『…でもさ』
紅海は小さく笑った
『久しぶりに、悟とゆっくり話せる気がして
なんか…失敗?したくないなって思っちゃって』
硝子は肩をすくめる
「考えすぎ…あんたが楽しんでる顔が一番安心するんだから
いつも通り行って、いつも通り笑ってきな」
少し間を置いて、硝子が付け足す
「どうせ悟は、あんたが隣にいるだけで機嫌いいよ」
紅海は目を瞬かせて、それから照れたように笑った
『……そっかな?』
胸の緊張が、少しだけほどける
帰り道、何を着ようか考えながら歩く足取りが軽い