第24章 憧れと二次会
カーテンの隙間から、薄い朝の光が差し込む
五条はゆっくり目を開けた
紅海の家
数秒遅れて、良い香りに気付く
味噌汁かな?
出汁のやわらかい香りが、部屋に満ちていた。
「ふぅ……」
体を起こす
キッチンから小さな生活音
包丁がまな板に触れる音… 湯気の立つ気配
家庭的な家って感じ
五条家では常に人がいた
世話係、使用人、整えられた生活
望まなくても用意される食事
上げ膳据え膳
子供の頃の自分は、生意気だったと思う
当たり前すぎて、何も考えていなかった
一人暮らしを始めてからは、自分でも料理をするようになった
だから——この雰囲気が懐かしいわけじゃない
それでも「…こういうの、いいな」
自然にそう思った
キッチンの方を見ると
紅海が顔を上げた
五条が起きたことに気付き、慌ててコンロの火を止めて
ぱたぱたと近づいてくる
「悟、おはよ…」
少し照れた声
「あのさ、昨日はごめんね…洗面所、タオル置いてるから
あと、朝ご飯作ったから、食べる?」
紅海が近づいた瞬間、ふわっとシャンプーの香りがした
早く起きて、身支度を整えて
朝食を作って
——それを、自分のために早起きしてくれたのかも
そう思った瞬間、胸の奥が、静かに満たされる
「食べる」
そう答えると、紅海がへにゃっと笑う
洗面を終えソファに座る
テーブルに並ぶ朝食は
炊き立てのご飯に
味噌汁、卵焼き、ウインナー
向かいに座る紅海
「口に合うかわかんないけど…」
「いただきます」
一口、味噌汁を飲む
温かい…うまい
妙に落ち着く朝食だ
会話は多くないけれど、沈黙が気まずくない
五条は箸を動かしながら思う
ああ、幸せだな
紅海が自分をどう思っているか
恋愛なのか、友情なのか、全然解らない
でも、正直、もうどうでもいい気がした
今この時間が心地いい
それだけで十分だ
——そう思ったはずなのに
少しだけ、欲が出る…
もっと一緒にいたい
味噌汁を置き、何気ない調子で言う
「ね?」
紅海が顔を上げる
「紅海が大丈夫ならさ、今度どっか遊びに行こうよ」
紅海はきょとんとした顔で
『どっか?』
「そ、プライベートで旅行とか行きたかったんだよね〜」