第24章 憧れと二次会
彼女は、いつも自分が普通かどうかを気にする
それは多分、昔から“普通じゃない”とか“おかしい”とか言われてたんだろうなと…
ちょっと前に、彼女の同級生に偶然会った時に感じ取られた
今日の夜、彼女が寝ぼけて服を掴んだ瞬間
帰る選択肢は消えていた
「紅海さぁ…僕、嫌なら、そのまま帰ってるよ」
紅海が顔を上げる
少し安心した様な表情に変わる
五条はタオルを肩に掛けたまま、ソファへ腰を下ろした
ちょっとまって、ソファの横に布団が敷いてある
「ぷっ、ははっ、何?もしかして、気使ってくれたの?」
ほんと無防備…酔って引き止めて
膝枕されて、シャワーまで貸して
その上、布団まで敷いてくれて
可愛いすぎる
今日、何回目の可愛いだろう?
派手さでも色気でもない
「放っておけない」と思わせる種類の可愛さ
本人はたぶん、一生気づかない
『ソファじゃ寝にくいと思って…一応…来客用
クリーニング出してるよ!あ、枕変わったら寝れない派?』
問題は、そこじゃないんだけどなぁ…
警戒心が低いとかじゃない
僕の事を信頼しすぎてる
ため息に近い息が漏れる
困る…男として
こういうことをされると
「紅海」
『ん?』
「僕じゃなかったらどうすんの?」
軽い調子で言ったが、視線は外さない
紅海は少し考えてから、
『悟だからかな?』
あっさり答えた
五条はため息をついて目を伏せる
そういうとこなんだよなぁ…
男として見られてないのか…信頼されすぎてるのか
微妙なライン…どちらにしても手を出しにくい
「…ありがと」
紅海は安心したように小さく笑う
「じゃあ、わたし部屋戻るね…何かあったら呼んで?」
背を向けようとした瞬間
「紅海…」
呼び止めた…が、数秒、考える
本当は言いたいことがいくつもある
危ないからやめろ
誰にでもこうするな
僕だから平気なんだぞ
でも全部飲み込む
代わりに
「戸締まり確認した?」
母親みたいな台詞が出た
紅海は少し笑う
『したよ』
「じゃあいいや、おやすみ」
『おやすみ、悟』
寝室の扉が静かに閉まる
部屋に残るのは、夜の音
五条は布団に胡座をかいて座り込んだ
天井を見る
…帰ればよかったかな
そう思いながら
まったく帰る気がない自分に気づく
そしてもう一度、小さく息を吐いた