第6章 偽物の星空を語った日
「なんだ、まだ終わらないのか」
頭の上にレノの重みがかかる。
椅子ごと囲われ、アグレイスは動くこともできなくなる。
画面の文字はルードが帰ってから一文字も増えていなかった。
伸びた手がキーを叩く。
”以上をもって、本報告の結びといたします。”
滞ることなく響く音が止まると、レノがこちらを覗き込んでにやりと笑う。
これまた勝手に送信された報告書は、取り戻しができない。
これでレノとふたりの時間は終わりかと、立ち上がる。
向けた先には、レノの作りかけ--一文字も入力されていないモニターがあった。
大きく開いた目を、細めて、悪びれた様子のない男を見やる。
「人のをやってる場合?」
「面倒見がいいって言われるぞ、っと」
これは本当にやらないに違いない。
アグレイスは椅子に座り直すと、カタカタと規則正しい打鍵音が響かせる。
Enterキーを強く叩くと、今日の日付と作成者名前が画面に表示される。
場所、メンバー、作戦名に続いて、レノの独断による身勝手な行動の顛末をというところで、プチンと音を立てて画面が消える。
「ちょっと!」
彼女が足元を蹴ると、くるりと回った椅子がレノに向かう。
「これ今日まででしょう!」
「夜の12時に読むやつなんて知らねえな」
レノがデスクに丸めて置いた上着を羽織る。
「星、見に行くぞっと」