第6章 偽物の星空を語った日
「ここをこうすれば」
レノがさらに操作すると、景色が草原に映り変わった。
草が揺れると、心地よい風が吹いているような錯覚さえ起きてしまう。
「たまにはこういうのもいいだろう」
満天の星の元、アグレイスはキョロキョロと落ち着きのない子供のように空を仰いだ。
「ええ、すごくいいわ! あれはデネブね! こっちはプロキオン? 夏と冬の大三角が同時に見れるなんて贅沢ね!!」
興奮を抑えられない調子で彼女が振り返ると、彼が彼女を見ていた。
星々の淡い光を受けた目はやわらかく。じっと見ているというよりごく自然に彼女を見返していた。
彼女は指していた腕を下げ、反対の手で二の腕を押さえた。
「……恥ずかしい」
無理にも笑えず平然を装ったが、最後は消え入りそうな声になってしまった。
「いいや」
短い返事。
「聞かせろよ」
いつもの軽口でなく、任務のときの真剣さでもない。彼にしては珍しい落ち着いた調子の声。星空に胸を高鳴らせた時とは別の意味で落ち着かない。
「星に興味があるの?」
レノは口を開きかけたが何も答えずに、アグレイスの側までつかつかと歩み寄る。
何かされる--期待と不安で一瞬身構えて、ぎゅっと目を閉じた。
どんな小さな音でも相手に伝わってしまいそうで、呼吸も止めてその時を待った。
静かな時がそのまま流れて、いい加減苦しくなって、目を開けると
少し離れたところに寝転んでいる彼の姿があった。
何も起こらない。
ただ星だけが静かに瞬いている。
彼女は彼の横に座り、空を見上げた。
そして、星の話を続けた。