第6章 偽物の星空を語った日
「あー、星がきれいねー」
遠い目--モニターが映すのは、なんの新鮮味もない夜の新羅ビル。
「何がきれいだ。ありゃオレらと同じ、残業で人生燃やしてる連中だ」
くるりと椅子を回し、彼女が”星”と称した、灯りの点った硝子群を一瞥するレノ。
無感情に吐き捨てた言葉に、ルードが立ち上がった。
「真面目にやらないのなら、帰るが」
すでに端末を切っていた彼は、開けていたスーツの前に手を掛けながらのそりとした動きで出口へと向かう。
残業仲間を捕らえるべく、アグレイスはオフィスチェアを蹴飛ばして、その進路を塞いだ。
「待って、ルード! あと少しだけ、ここ三行だけ、書いてぇ!」
乾いた瞳を精一杯潤ませる努力をした彼女と彼女の席を見比べてルードは額を押さえた。
サングラス越しに点滅するキャレットは後数行というところで止まっている。
「アグレイス、プロの仕事をしろ」
すかさずルードの腰にしがみついたレノは、彼女を真似た上目遣いだ。
「オレのも頼むわ。ここからここまで、書いてぇ!」
わざとらしい声に気を取られ、彼のダークモードに目線を寄せてしまってから、息を吐く。
サングラスの位置を確かめて、絡みつくレノの赤毛をべりりと引き剥がした。
「……付き合いきれん」
空気の音を立ててドアがスライドすると、残った社畜はふたりになった。