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【FF7】ボクシング・デー

第5章 温もりを分けた日


「ちょっと待ってろ、何か探してくるから」

レノの手が彼女をその場に止まらせる。背中を向けた彼が、扉の前で振り返った。

瞼が重い。レノの姿がぼんやりとする。

火の揺らめきと暗闇が交代で視界を覆い、徐々に暗闇が優勢になってきた。

舌打ちが床に吐き捨てられる。

ふわっと埃が舞い、アグレイスに重みのある布巻き付けられた。
ベルベットのカーテンだったものに温かさはない。

「つまんねえな、なんか話せよ」

「……レノ」

「あんだよ」

胸が圧迫されて苦しい。声を出すことは辛かったが、ここで話さなければもう話せなくなりそうだった。

「楽しかった」

額に触れていたレノの手が止まった。

「任務も、一緒にしたこと、全部……ぜんぶ」

アグレイスは笑ったつもりだった。

「私……レノと一緒ならなんでも楽しかったの」

瞼がゆっくりと落ちていく。

「……おい」

掴まれた肩が揺すられる。

「遺言なんて聞いてねえ」

揺さぶる力が強くなる。

痛いはずなのに、意識が遠のく。もう寝かせて欲しい。そう口にできれば、レノの焦燥を止められただろうに。せめてもの意趣返しと彼の体を爪の先でなぞる。

「ちょっとはこっちに気ぃ使えっての!」

レノは彼女を片手で制したまま、自身が羽織っていたコートを乱雑に投げ捨てた。
暖炉に火がともっているとはいえ、部屋の中は寒いだろうに。アグレイスは薄れていく意識の中でレノの奇行を眺める。彼はぶるりと体を震わせてから、上着もシャツも隠していたナイフも床に叩きつける。

自身に留まらず、暴虐はアグレイスにも及んだ。巻き付けられたカーテン、タークスのスーツ、シャツ、果ては下着まで引き千切る勢いで暴いていく。最後に残った剝き出しの肌には直接熱が押し当てられる。冷え切った体に布越しでは感じられないレノ自身の--

レノは息を吸い込むと、外に向かって叫ぶ。

「ルード!!」

相方の名前が部屋に響く。

「絶対見つけろよ!!!」

お前以外にどう説明すりゃいいってんだ。

諦めにも似た力のない独り言に、暖炉の火が揺れた。
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